ポポフ報告会とシンポジウム

ゴリラカフェ(鈴木滋氏撮影) 去る6月23日(日)に京都市にある堺町画廊で、ポポフの報告会とシンポジウムが開かれました。今年の報告の目玉は何と言ってもポポフがWhitley賞を受賞し、5月2日にロンドンで行われた授賞式にポポフの代表者のジョン・カヘークワが招かれて、アン王女から賞を授与されたことでした。Whitley賞は草の根的な自然保護活動をしている団体に与えられるもので、今年で20回目になります。ちょうどポポフも昨年20周年を迎え、現地でその記念式典が行われました。その様子が報告会でもスライドを交えて紹介されました。

シンポジウムの様子(鈴木滋氏撮影)続いて、「ゴリラとエコツーリズム」と題するシンポジウムが行われ、ツーリストの立場から戸田恵美さん、地元国やゴリラ保護のために活動する国際的なNGOの立場からバサボセ・カニュニさん、そしてゴリラの研究者の立場から私が発表を行いました。

戸田さんは、ご自身が体験したウガンダのゴリラツアーの様子を語り、ブウィンディ国立公園の施設やゴリラを観察する際のルール、地元住民の催しなどを報告してくれました。バサボセさんはルワンダの火山国立公園を中心に、エコツーリズムの経済効果や地元での問題点、とくに人獣共通感染症の脅威について報告しました。コンゴ民主共和国のカフジ・ビエガ国立公園で保護区に居住していた狩猟採集民のレンジャーとして雇用対策、ブウィンディ国立公園でバトゥワ・トレールという狩猟採集民の文化を保全し伝える試みなど、新しい話題も盛り込まれました。私は日本のエコツーリズムと比較して、地域が丸ごと加わる重要性について指摘しました。いくら外国の援助があっても、内戦などで監視機構が弱体化すると密猟や密伐などが増え、ゴリラは危機にさらされます。事情が異なっても地元の人々が自然の持続的な利用価値を理解し、ツーリズムに主体的に参加しなければうまくいきません。ガボンのムカラバ国立公園ではJSTとJICAの共同事業として、ポポフのこれまでの活動を参考にしながらゴリラツーリズムの企画を立ててきました。ここで重要なのは住民の主体的な参加と「語りを用いたツーリズムの創出」です。住民たちが自ら関わってきた自然の大切さと文化を語り、それを科学的な知識の下に価値づけるインタープリターが必要です。それを育て、行政と地元と科学者が一体となって推進できるような事業を企画しようという話をしました。

フーフーを盛り付ける(水野礼子氏撮影) 3人の話の後は、参加した方々から質問や意見が出て、とても有意義な会になりました。アフリカでゴリラを観察できる4つの国立公園の 案内や、それぞれのゴリラの様子が資料や写真として展示されました。それを見ながらゴリラカフェやゴリラバーでアフリカのコーヒーやお酒、それに フーフーを初めとするアフリカ料理を味わいながら歓談の時を過ごしました。また、こういった機会を持ちたいと思いますので、みなさん 楽しみにしてください。

山極寿一

写真提供:水野礼子、鈴木滋

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