ポポフ現況報告
山極壽一
この9月末に、私はルワンダ共和国の火山国立公園を訪問した際、ポポフのバサボセ・カニュニさんとお会いし、ポポフの支援金を渡してきました。バサボセさんは現在、コンゴ民主共和国南キヴ州の州都ブカブに家族で暮らしています。ブカブは30キロメートル先にあるポポフの本部とともに、まだ政治情勢が不安定で日本の外務省から渡航を控えるように要請が出ているので、私は訪問することができません。そこで、国境を越えてわざわざ会いに来てくれたのです。5年ぶりの再会でした。バサボセさんは長男のアドリアンさんと現れ、近況を話してくれました。
新型コロナウイルスによる感染症はほぼ収まっていて、ブカブの街はかつての活況を取り戻しています。バサボセさんはブカブ大学の教授と中央科学研究所の研究員を兼任しており、研究所では私と実施してきたゴリラとチンパンジーそれぞれ1グループのモニタリングを継続しています。新たにフクロウグエノンというサルの調査をする若い研究者を採用し、その指導に当たっているそうです。このサルはコンゴ東部に分布していますが、この地域のフクロウグエノンは1980年代に新しい亜種として認定されています。フクロウのような太い声で鳴くのが特徴です。
息子のアドリアンさんが現在23歳です。昨年亡くなられた奥様のグラベさんによく似ていますが、大柄で体格はバサボセさんゆずりです。今年ブカブ大学を卒業して、アグロフォレストリー(農業林学)を学べる大学院に進みたいと言っていました。日本に留学したいという希望を持っているので、国費留学生の資格を取るように勧めておきました。どなたか彼を指導してくれる方がいましたら、ぜひ私までご連絡ください。
さて、バサボセさんが支援金をポポフの代表者ジョン・カヘークワさんに渡してくれた後、ジョンさんからすぐにお礼のメールとポポフの近況を示す写真が送られてきました。
まず、カフジ・ビエガ国立公園には少しずつですが観光客が戻りつつあります。ポポフはこれらの観光客をゴリラだけではなく、自然と文化の体験をガイドし、その収入や他の外部資金と合わせて公園のパトロールに必要な物資(食料、服、ブーツ、キャンプ用品など)を提供しています。また、ドローンを用いた新しい調査法を考案して公園といっしょに空撮を実施しました。