ゴリラ

 

ヒガシローランドゴリラのシルバーバック(Ninja)

ヒガシローランドゴリラは、コンゴ民主共和国の東部だけに生息するゴリラの亜種で、系統的にはカメルーン、ガボンなどにすむ西ローランドゴリラよりもウガンダやルワンダにすむマウンテンゴリラに近いと考えられています。マウンテンゴリラに似て体毛が黒く、オスは成熟すると背中が鞍状に白くなるのでシルバーバック(銀の背)と呼ばれます。でも、体毛は西ローランドゴリラに似て短く、足も物をつかめるように木登りに適した形をしています。

ヒガシローランドゴリラ

マウンテンゴリラ

ニシローランドゴリラ

ヒガシローランドゴリラは低地の熱帯雨林から高地の山地林まで連続的に分布しており、多様な種類の植物を食べて暮らしています。低地では森に豊富に実る大小の果実を食べ、アリやシロアリなどの昆虫もよく口にします。でも、乾季になって果実が少なくなると、アフリカショウガ やクズウコンといった地上性の草本よく食べるようになります。ゴリラは巨大な直腸をもっていて、ここに共生しているバクテリアの働きによって植物繊維を分 解します。そのため、馬糞のようなパサパサした大きな糞をします。果実の種類や量が少ない山地林では、一年中ツルイラクサ、ヤエムグラ、アザミなどの草本 を食べて暮らしています。草食にも適した消化器官を発達させたおかげで、ゴリラは多様な環境に生息することができるのです。

ヒガシローラ ンドゴリラは、ふつう1頭のオスと複数のメスや子供たちから成る10頭前後の集団を作って暮らしています。オスもメスも思春期に達すると生まれ育った集団 を離れ、メスだけが他の集団へ加入します。オスは顔見知りのメスを連れ出すか、しばらく単独生活をした後、他集団からメスを誘い出して自分の集団をつくり ます。オスもメスも一生の間にさまざまな仲間と社会生活を組み替えていくのです。ゴリラの集団はなわばりをもたず、多くの集団と多様な関係をもって暮らし ています。人間の父親に匹敵するようなシルバーバックがいることなど、ゴリラの社会は人間家族の原型を探る格好のヒントを与えてくれるのです。

カフジの山地林にすむヒガシローランドゴリラは、とても大きな群れを作ることがあります。ムシャムカ、ミシェベレと呼ばれるシルバーバックが、それぞれ44頭の群れを作ったことがあります。いずれも老練な経験豊かなオスでした。これは単独のオスが作った群れとしては最大です。マウンテンゴリラでは67頭という大きな群れができたことがありますが、これには6頭のシルバーンバックが含まれていました。山地林に比べ、低地の熱帯雨林に暮らすヒガシローランドゴリラは比較的小さい群れを作り、17頭がこれまでの最大です。低地では林床にあまり草が生えておらず、果実や樹木の葉を多く食べるので、たくさんのゴリラが集まって食べることができないからだと思われるのです。食べるときも、休むときも、旅をするときも、ゴリラはいつもみんなが集まって過ごすことを好むのです。

 ゴリラは毎晩ベッドを作って眠ります。これはオランウータンやチンパンジーと共通な習性ですが、ゴリラは地上に作る点が違います。体が大きいゴリラは地上性の肉食獣(ヒョウやハイエナなど)を怖れないからだと考えられています。カフジ山にすむヒガシローランドゴリラのベッドも80%が地上に作られています。樹上に作られているのはほとんどが子どものベッドです。やはり、子どもは肉食獣が怖いのかもしれません。ある時、シルバーバックが死亡して、しばらくメスと子どもだけの群れができたことがありました。このとき、メスも子どもも一斉に樹上にベッドを作ったのが印象的でした。大きなシルバ―バックがそばにいてくれないと、メスたちは安心して地上で眠るわけにはいかないのです。

drawing by Mwami