の昔話
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ヘビとクワレ語り手:ジョン・カヘークワ
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クワレは空を飛ぶことができますが、ヘビはできませんでした。 あるとき、山火事がおこりました。火は山々を燃やし、草を焼き、燃え広がって行きました。動物たちも鳥たちも逃げ出し、鳥たちは飛んで遠くの山へ逃げて行きました。でもヘビは這い回っているうちに火がもうそこまで迫ってきました。その時ヘビは、飛び立とうとしているクワレに気づいて、呼びとめました。 「すみません、すみませんクワレさん。お願いです。わたしを助けてくださいな」 「えっわたしに何をしろというのかい」とクワレは答えました。 「わたしは飛べないし、もう火が迫ってきていて焼かれてしまいます」 「わたしに何ができるというんだい」 「助けてくださいな」 「何もできないよ。私は飛んで逃げるところさ」 「いやいや、こっちへ来てわたしを運んでくださいな。その首に私を巻きつけて連れて行ってくれればいいじゃないですか」 ヘビにそうたのまれて、クワレはどうしようかとても迷いました。そして 「わかったよ。首に巻いて運ぶから、さあどうぞ」と言いました。そこでヘビはクワレの首に巻きついて、クァレは飛び立ちました。火はもうそこまで迫って来ていました。クワレはプルルルっと飛んで、遠くの山まで火から逃げて行きました。 そして安全なところまで来るとヘビにいいました。 「へびさん、さあ降りてくださいな。ここは草がいっぱいでもう火が来る心配もないよ」 ところがヘビは 「いやいやここがいいんだよ。わたしはこの首が好きなんだ。とっても好きなんだから、ここにいるよ」といいました。 「早く降りてくださいな。ヘビさんは重くて、もう首が痛いし疲れてしまったよ」 クワレが頼んでもヘビは 「いやいやここが好きなんだよ」と聞きません。そのうち 「ああ腹がへってきたなあ。このままでは腹がへって死んでしまう。君を食おうかな」 というと、ヘビはクワレを飲み込み始めました。頭からクワレを飲み込み、とうとう全部飲み込んでしまいました。 *クワレは草原にいるウズラのような鳥
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挿し絵、訳:ふしはら のじこ |