コ ンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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ククとシアフ(にわとりとサファリ蟻)

語り 手 : マラシ
 

むかしむかし。クク(にわとり)とシアフ(サファリ蟻) はなかのよい友達でした。
ある日、ククが
「ねえ、ぼくのおじさんの所へいっしょに遊びに行かないかい」と言いま した。
シアフは喜んで、二匹は一緒に旅に出ました。
 やがて、かなりの道のりをきたとき、ククはうんこがしたく なりました。ククは
「ちょっと、ここで待っていてくれないか」とシアフに言って、森の中へ入って行きました。ククが森の中へ入ると、 大きなぞうが死んでいました。
友達のシアフは肉が大好きです。このゾウのことを知ったら、肉を全部食べてしまうまで、ここから動かな いでしょう。ククは、ぞうのことをシアフに言うのはやめておこうと思いました。ククは道にもどり「さあ、先を急ごう」と、シアフに言いました。
  二匹は、歩いて歩いて、やがておじさんの家に着きました。おじさんの家では、たいそうなもてなしを受けました。酒をふるまわれ、笑って楽しくすごすうち に、夕方になりごちそうが運ばれて来ました。ごちそうはご飯と、森の動物の肉でした。
 食事が始まろうとするときになって、ククは表 へ出て行きました。またククがもどって来たときには、シアフが肉を皿の下にかくしてしまっていて、おかずなしのご飯だけがありました。
  二匹は食べ始めました。しばらくして、ククが
「ご飯だけで、おかずはないのかなあ」と言いました。シアフは
「そ のようだねえ。おかずは来なかったよ」と答えました。ククはご飯を食べ、食べ終わると、おじさんたちとおしゃべりをするため、外へ出て行きました。
  シアフは食べて食べて、ご飯を全部食べ終わると、かくしておいた肉も全部食べてしまいました。
 あくる日、二匹は帰ることにしまし た。
 道に出て歩きはじめると、シアフはククに
「夕べは、どうしてご飯ばっかり食べていたんだい。肉もいっぱい あったのに」と言いました。
「ええっ、なんだって」ククはびっくりして、地面にへたりこんでしまいました。怒ったククは、自分がかく していたことも、シアフに話しました。
「じつはねえ、森の中で君の大好物のぞうが死んでいたんだ。旅をはじめた日に見つけたけど、君 が知ったら、肉を食べ終わるまで動かなくなるだろう。だから言わなかったのさ」
「なんてこった。大きなぞうのこと、大きな肉のことを ぼくにかくしていたなんて。君はひどいやつだ」と、シアフは怒りました。ククも
「君だって肉をかくして、自分だけで食べてしまった じゃないか。ぞうのことを教えてやっても、君はやっぱり肉をひとりじめしていただろう。君は肉が大好きだからなあ。ずるいやつだ。でもぼくたちはどちらも 悪知恵がはたらくってことか」と言いました。
 シアフは森の中にあった肉のことを思うと、くやしくてしかたありません。
  そのときから、シアフはサファリアント(旅行蟻)と呼ばれるように、旅から旅へと歩きまわるようになりました。今でも、あちこちめぐり歩いて、ククがかく していたぞうの肉をさがしているのです。
 いっぽうククのほうは、餌をついばむとき、かならず足で餌をかきちらかします。地面や泥も かき分けます。これは肉が下にかくされていないか捜しているのです。
 ここで、おはなしはおしまい。
訳 /絵:伏原納知子