コ ンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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ニワトリ と タカ

語り 手 : :バサボセ・カニュ
 

むかしむかし、ニワトリとタカは大の仲良しでした。いつも、どこへ行くのも一緒。子どもたちも仲良し で、一緒に学校へ行ったり、遊んだりしていました。
ま た、お互いにどんなものでも、貸したり借りたりしていました。でも、タカにはどうしても貸したくない、大切なものがありました。それは、タカが遠くの国の 友達からもらった縫い針でした。縫い針はめったに手に入らない、大切なものだったのです。タカは、縫い針をとても大事にしていました。
でもある日、ニワトリはタカの縫い針のことを知って、貸してほしいと頼みました。
「タカさん、私の子どもたちの服はあちこち破れて、ぼろぼろになってしまったわ。どうかあなたの縫い針を貸してくださいな」
タカは、仲良しのニワトリに頼まれて、断わる訳には行きません。でも、とてもやんちゃなヒヨコたちが、針をなくさないか心配でなりませんでした。
「ニワトリさん、この針はたった一本しかない大切な大切な
針なの。いつも大騒ぎしているヒヨコたちがなくしてしまわ
ないか、とても心配なんだけど」
タカはそうニワトリに言いました。
「心配なさらないで、子どもたちには絶対に渡さないから。きっときっと返しますから、どうぞ私に貸して下さいな」
ニワトリにそう言われても、タカはなかなかうんと言いませんでした。
「タカさん、私達はいつも一緒にいるのに、子どもたちの服がぼろぼろなのも知っているのに、どうして助けてくれないの?」
こう言われると仕方なく、タカはニワトリに針を貸してやることにしました。
「服を繕うために貸してあげるけれど、絶対に失くさないでね。これを失くすと、とてもやっかいな事になるわ」
ニワトリは針を借りて服を繕うと、大切な縫い針を隠しておきました。
ところが、ニワトリのヒヨコたちは、本当に手に負えないやんちゃ坊主でした。タカが心配していた通り、ニワトリが隠しておいたい針を見つけて、おもちゃに して、失くしてしまいました。
ニワトリもヒヨコたちも針を捜しましたが、見つかりませんでした。
タカはたいそう怒りました。
「あんなに失くさないでと言ったのに。遠いところからもらった大切な大切な針なのに」
そして、その時から、タカはヒヨコを見つけると、食べてしまうようになりました。今でも、タカがヒヨコを襲うのは、この縫い針のせいなのす。
また、ニワトリが地面の土を、足で掘り返しているのをよく見かけるでしょう。あれは失くした縫い針を今も捜しているのです。
今日までまだ、縫い針は見つかっていません。
訳 /絵:伏原納知子