コンゴの昔話
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カチェチェとゾウ

語り手、挿し絵:ビチブ・ムフンブーカ
 


  ある日、カチェチェ(鳥の名前)が森の中を歩いていると、水場で水を飲んでいるゾウと出会いました。カチェチェは
「あなたは私よりも、森のどの動物たちよりも大きくて偉いけれど、私カチェチェは何も食べないで飲まないで、6日間でも平気で過ごせるのですよ」
とゾウに言いました。ゾウは
「おまえなんか私の前では取るに足らないやつさ。2日もたたないで死んでしまうだろうが、私は平気で森の中を歩き続けることだろうよ」
と言いました。
「ではゾウさん。あなたは歩いて私はあなたの背中に乗って、さあ旅をはじめようじゃありませんか」
とカチェチェはゾウに言いました。  
 2人の旅がはじまりました。カチェチェは
「今から草を食べたり水を飲んだりしちゃだめですよ。私も虫を食べたり水を飲んだりしませんから」
 とゾウに言いました。ゾウはカチェチェに
「お前さんは、そうやって飢え死にするまで私の背中に乗っていればいいさ」
 と言いました。カチェチェは
「さあ、準備はできましたよ。旅をはじめましょう」
 と言いました。
 2人の旅が始まりました。ゾウは山を登り始めました。カチェチェは自分が飛び上がっても、ゾウは後ろを見ることができないのを知っていました。カチェチェは飛び上がると、ゾウが落とした糞の臭いに集まって来た虫を食べました。
 カチェチェは、ゾウがまったく気づかないのを分かって言いました。
「今日で、旅も3日めですね」
 ゾウは
「私は少しも腹はへっていないぞ。さあ旅を続けよう」
 といいました。
 朝早く、ゾウとカチェチェは道を歩いて行きました。カチェチェがゾウに聞きました。
「あなたのお腹から血が出ているのではないですかい?」
 ゾウは
「お前さんは知らないのかい。4日も飲まず食わずでいると、赤いおしっこが出るもんだよ。お前は旅を続けるのが怖くなったんだろう?」
 とカチェチェに言いました。
 カチェチェは
「いいえ、私はあなたの背中にちゃんといますよ」
 と言いました。ゾウは
「私のからだのことなど心配するな」
 と言って、2人はまた旅を続けました。
 5日目になると、ゾウのからだは大そう変わってきました。ゾウは
「カチェチェ、お前はなかなか知恵の働くやつだ。飛び上がって好物の虫を食っているんだろう」
 と言いました。カチェチェは答えて
「背中の上で虫を食べたりする訳がないでしょう。ほら、空腹でこんなに痩せてしまいましたよ」
 と言いました。
「では旅を続けよう。もし空へ飛び上がって虫を探したりしたら、お前さんを地面にたたきつけて食ってしまうからな」
 とゾウは言いました。
 5日目の夜。ゾウは何日もの間、何も飲まず食べなかったせいで、眠ることも出来ませんでした。ゾウは言いました。
「私はもう死んでしまうだろう。何か食べさせて水も飲ませてくれないか」
 でもカチェチェは
「私たちの約束の日まで、あと1日ですよ」
 と言いました。
 次の朝になると、ゾウはこの世に別れを告げてしまいました。カチェチェは喜びの声を上げました。
 ゾウは自分を偉いと思い込み、カチェチェをばかにしたために死んでしまいました。

訳:ふしはら のじこ