コ ンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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ウサギとヒョウ

語り手:マラシ    
挿し絵・訳:ふしはら のじこ
 
   むかしむかし、ウサギとヒョウが大きな森の中で暮らしていました。ある時ヒョウがウサギに「友達になろうじゃないか」といいました。ウサギも「いいね」と言いました。それから、ウサギとヒョウはどこへ行くのもいつも一緒でした。
 ある日、ヒョウはウサギに豆を買ってきてくれと頼みました。ウサギは買い物にでかけて行き、豆を買って帰ってきました。そうして、豆料理ができあがるころ に、ヒョウはまたウサギに買い物をたのみました。 それは、ムカムシという鍋から食べ物をすくうしゃもじでした。ウサギは思いました。ごちそうがもう出来上 がるというのに、また遠くまで買い物に行けというのは、ヒョウはごちそうを独りじめしようと思っているのに違いない。
 ウサギは知恵を巡らせながら、道を行きました。森の中ほどまで来ると、ウサギは森の葉っぱをとって、葉っぱで体中を覆いました。ヒョウを脅かせてやろうと思ったのです。ウサギが葉っぱで体を覆うと、全くもって恐ろしい動物になりました。
 家に戻ると、ウサギはヒョウに恐ろしい姿でいいました。
 「お前の手を鍋に入れてみろ。手で豆をすくって私のところへ持って来い」
ヒョウは恐ろしい怪物がやって来たと思い、ガタガタ震えました。ヒョウは手を熱い鍋の中に入れて、豆をすくって差し出しました。怪物はうまそうに豆を食べましたが、ヒョウはひどい火傷を負いました。怪物は豆を食べ終えると、また注文を出しました。
 「急いで湯を沸かして、ウガリをこねてくれ」
 ヒョウは困りました。「どうしたものか。ウガリをこねるムイコを持っていないのに」
すると怪物は「お前の手でこねろ」と言いました。ヒョウは手でウガリをこねました。熱い湯に粉を入れてこねたので、またひどい火傷をしてしまいました。
 怪物はウガリをうまそうに食べ、食べ終えると帰って行きました。
 長い時間がたってから、ウサギは仮装の葉っぱを取り、家に帰って来ました。
「ねえ君、頼まれたムカムシを見つけることができなかったよ」
「いやいや、もういいんだ。君が出かけてから大変な目にあってね。恐ろしいものがやって来て、鍋から豆を出すのも、ウガリをこねるのも手でやらされたもんだから、こんなにひどい火傷をしてしまったよ」
 ウサギはヒョウをなぐさめていいました。
「大丈夫、すぐ治るさ。今まで通りにやりましょう」
 ある日、ウサギとヒョウは森へ出かけました。森の中で、ヒョウがウサギにいいました。
「おまえさんはいつもいつも、私の仕事を頼まれて、好きなところへ使いに出されても、嫌がりもせずにやっているのは、私が怖いんだろう?」
 ウサギは答えていいました。
 「ええ、私はあなたに従っているし、怖がっていますよ。でもあんたは、とんでもない愚か者だね。だって、あんたにウガリを手でこねさせたのも、豆を手でよそわせたのも、それであんたが火傷をしたのさえも、私の仕業だよ。ほんとに大ばか者だね」
 ヒョウはそれを聞くと、たいそう怒って、友達を引き裂いてやろうとしました。けれど、ウサギはとっても素早く逃げて、一つの穴の中に飛び込んで隠れてしまいました。
 友だちは、もうそっれっきり。会うこともありませんでした。
これでお話おしまい。