ガボンの昔話
元のページへ戻る
 

チンパンジーの尻が赤いわけ

語り手 : エチエンヌ・アコモ
 


ガボンでは夜、火を囲んで 家族でお話を聞きます。今から話すお話は、私のおばあさんが話してくれたお話です。このお話は、なぜチンパンジーのお尻は赤いかという話です。

昔々、村では人と全ての動物たちが一緒に暮らしていました。村長は人々の村長でもあり、動物たちの村長でもありました。村長はとても偉く、その命令は絶対でした。
ある日、ヒョウが人の家にやってきました。ヒョウは爪で、その家のお母さんに大けがを負わせ、子どもを連れ去って行きました。そしてその子を、骨も残さず食べてしまいました。ヒョウは子どもを食べる前に、犬とチンパンジーに出あっていました。
お母さんは村長の所へ駆け込んで行って、ヒョウが子どもを連れ去ったことを話しました。村長はすぐにヒョウを呼び、
「子どもをどこへやったんだ」と聞きました。
「川のそばで見かけましたがね。きっと川に落ちたんじゃないですかね」
とヒョウは答えました。
村長はチンパンジーを呼んで、子どものことを聞きました。するとチンパンジーは
「ヒョウが連れて行ったりはしていませんよ。私も川のそばで子どもを見かけたので、川に落ちて死んでしまったのでしょう」といいました。
 村長が困っていると、骨をくわえた犬が通りかかりました。犬は村長を呼びとめると
「私は、ヒョウが子どもを連れて行くのを見ましたよ」といいました。
村長は犬を近くに呼び、何を見たのか聞きました。
「私は、人の家のベッドの下に居ました。ヒョウが来て、お母さんを爪で引っ掻き、子どもを連れ去って行きました。それで私はヒョウの後を追ったのです。そしたらヒョウは、子どもを骨も残さず食べてしまいました」といいました。
ヒョウは
「そんなことは嘘だ」と叫びました。
 そこで、村長はヒョウの家へ行き、家の中で子どもの血と髪の毛を見つけました。
村長はとても怒りました。そして、村中の全てのものを呼び集めて言いました。
「これからは、人がヒョウを見かけたらヒョウを殺すだろう。ヒョウは人を見たら、襲うだろう」
 その後、チンパンジーを呼びました。
「お前は何故、嘘をついたのか」
といって、人々の前でチンパンジーの尻をたたきました。村長はとてもとても強くチンパンジーの尻をたたきました。
 昔、そういうことがあったので、チンパンジーの尻は赤いのです。

語り:エチエンヌ・アコモ 通訳:安藤智恵子 再話・絵:ふしはらのじこ

  このお話は、2010年国際霊長類学会で来日したガボンとコンゴの方々を招いて開いた「アフリカ人研究者による昔話の語り」(9月20日堺町 画廊)で語られたお話です。コンゴからPOPOFのジョン・カヘークワさんとバサボセ・カニュニさんが参加。ガボンからはシメーヌ・ンゼさん とエチエンヌ・アコモさんが参加しました。