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ンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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ブルコッコ(タラコー)とカメ |
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![]() 一方、カメは何百という自分の子供たちを呼び集めると、「さあ、これからお父さんのいうことをよく聞きなさい」といって、子供たちを見回しました。カメの 子供たちは、みんなよく似ていて見分けがつきません。でも、みんな真剣な顔をして聞き耳を立てています。「これはわたしたちカメの誇りをかけた闘いだ。あ の高慢ちきなタラコーをこらしめてやろうと思う。みんなこれから出発して、明日の朝まだ暗いうちに一人ずつ山という山のてっぺんに登りなさい」と申しわた し、小さい声で何ごとかをいい含めたのです。 翌朝、ジャングルに陽の光がキラリと射し込むのを確かめると、タラコーとカメは森でいちばん大きな木の根元で落合いました。「カメ君、今からでも遅くは ないよ。君が一言あやまれば、昨日のことは水に流してあげよう」「なになにタラコー君、君がいい過ぎだったと反省するなら、ぼくだって君に恥をかかせるよ うなことはしないがね」 二人とも負けてはいません。よういどん。二人は出発しました。タラコーはゆうゆうと羽を広げ、一気に山の頂上まで舞い上がりました。ところが、カメはも そもそと手足を動かしたかと思うと、そばに生えていた大きなキノコの陰にかくれてゴロリと横になってしまったのです。大空に駆け上がったタラコーは、頂上 をすばやくひとめぐりすると、「ブルッ、コッコ。さあ、やってきたぞ」とたからかに呼びかけました。自分の飛翔力に自信をもっているタラコーは、「カメの 奴め、まだ山のふもとでふうふういっていることだろう」とつぶやくと、羽を休める木を探しまし た。 ところが、その時です。山の頂上で待機していたカメの子供が、「なんだ、今頃やってきたのか。ぼくはもうとっくに着いているぞ!」と大声で叫んだので す。タラコーは飛び上がるほど驚いて、「ええい、しまった。油断をしてのんびり飛びすぎたか」と羽をかきむしり、首をうち振って悪態をつきはじめました。 でも、くやしくてくやしくて、このままでは収まりがつきません。すぐさま、きびすを返すと、「もう一度勝負だ!今度はあの山まで競争するぞ」そういい放つ と、ものすごい速さで舞い上がりました。そして、隣の山の頂上へ着くとすばやく、「ブルッ、コッコ」と叫んだのです。しかし、この山にもカメの子供が待ち かまえていました。カメの子供は、またしても大声で、「遅い遅い、ぼくはとっくに着いているよ」と叫び返したのです。タラコーは気が違いそうになりなが ら、「だめだ、だめだ、まだ勝負はついていない。もう一度だ!」そういうと、また別の山めがけて舞い上がりました。 でも、山という山の頂上には必ずカメの子供が待ちかまえていて、「ぼくはもう着いているっぞ!」と高らかに勝利を宣言するのです。かわいそうに、タラ コーはとうとうカメより先に山へ到着することができませんでした。 でも、あきらめきれないタラコーは、今でも山の頂上へ着くと必ず、「ブルッ、コッコ」と叫んで、カメがいないかどうかを確かめます。そして、タラコーを まんまとだましたカメは、嘘がばれることを恐れて、いつもキノコの陰に隠れて暮らすようになったのです。 訳:山極寿一 絵:ふしはらのじこ
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