コンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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鳥はどこから来たか

語り手:マラシ
 
  鳥はどこから来たか 鳥は神様によって創られたものと言われています。
むかし、神様は鳥を一羽だけつくりました。その鳥は天上の国にくらし、地上に降りて行くことは神様から禁じられていました。けれどもある日、鳥はおなかが 空いて、食べ物を探しに地上に舞い降りてきました。そして、その後何度もやって来るようになりました。あるとき、一人の猟師が森で動物の足跡を追っていま した。そして、今まで見たことのないその鳥が罠にかかっているのを見つけました。鳥は罠にかかっていましたが、傷つくこともなく元気でした。猟 師は鳥を捕まえて、首をひねろうとしました。すると、鳥は言いました。
「わたしは神様に創られた天上の生き物です。この地上のものではありません。今日は食べ物を探しに来てこんな災難にあってしまったのです。どうかわたしを放して、天へ帰らせてください」
「いやだめだ、今日わたしの罠にかかった獲物は、おまえだけなのだ」
 そう言うと猟師は、鳥を殺さずに縛って家へ持って帰りました。家に着くと、猟師は鳥の羽をむしり取ろうとしました。すると、また鳥は猟師に言いました。
「猟師さん、猟師さん、わたしは神様に創られた鳥です。天上の国で暮らしている鳥なのですよ。食べ物を探しに来てこんな災難にあってしまったのです。どうか、わたしを殺さないで逃がしてください」
「いやだめだ。今日はまったく獲物のとれない日で、わたしの食べ物はおまえだけなのだ」
 猟師は、鳥が羽をむしられるのも殺されるのもいやがるので、そのまま鍋の中に放り込んでしまいました。火にかけられた鍋の中でも、鳥はさっきと同じこと を話し続けていました。それを聞いていた村の人たちは、鳥を食べるのを嫌がりました。人々が鳥というものを見たのもこの時がはじめてでした。
 けれども、猟師は鳥を食べました。鳥はそれでも話つづけていました。猟師が鳥を全部食べてしまうと、猟師のお腹が膨らんできました。お腹はどんどん、ど んどん膨らみ、やがて家と同じぐらい大きくなってしまいました。それでもまだまだ、お腹は膨らみ続け、とうとう爆発してしまいました。
 するとその中から、何千、何万と言うたくさんの鳥が、飛び出して来たのです。この時から、私たちの住むこの世界にも、鳥がたくさんいるようになったのです。おはなしこれでおしまい。
  

訳・絵 伏原納知子