コンゴの昔話
|
||
元のページへ戻る | ||
三人の兄弟語り手:バサボセ・カニュニ
|
||
村々を治める王様には、とてもとても美しいむすめがいました。長兄は父親にこういいました。 「お父さん、私の妻は王様のむすめ以外に考えられません。王様のむすめを嫁にもらうため、王様のところへ行ってきます」 父親は長兄を止めましたが、長兄は聞く耳を持ちませんでした。そして、一人出かけて行きました。道をずっと歩いて行くと、道端にからだ中できものだらけの老人が座っていました。老人は長兄を見るといいました。 「お若いの、ちょっと頼みを聞いてくれないかい。私を川まで連れて行って、このできものの傷を洗っておくれ」 長兄は老人の汚い姿を見ると、返事もせず、知らん顔で通りすぎて行きました。森の中の道をどんどん歩いて王様のところへ向かいました。 王様のところへ着くと、長兄は王様のむすめを嫁にくださいと頼みました。すると王様はこういいました。 「むすめを嫁にするには、わたしが出す四つの問題をどれも解決しないといけない。一つでもできなかったら、すぐに牢屋行きだぞ」 長兄は最初の問題でしくじり、牢屋に入れられてしまいました。 家では父親が長兄の帰りを待っていましたが、長兄はいつまでたっても帰って来ませんでした。こんどは次兄がいいました。 「お父さん、私も王様のむすめを妻にしたいので、王様のところへ行きます」 父親は長兄も帰って来ないままなので、反対しました。けれど、次兄も聞く耳を持たず、出かけて行きました。道をずっと歩いて行くと、道端にからだ中できものだらけの老人が座っていました。老人は次兄を見るといいました。 「お若いの、ちょっと頼みを聞いてくれないかい。私を川まで連れて行って、このできものの傷を洗っておくれ」 次兄も老人の汚い姿を見ると、返事もせず、知らん顔で通り過ぎて行きました。森の中の道をどんどん歩いて王様のところへ向かいました。 次兄もまた、王様のむすめを嫁にくださいと頼みました。そして、最初の問題でしくじり、牢屋に入れられてしまいました。 父親は兄弟をずっと待っていましたが、二人とも帰って来ませんでした。やがて、小さかった末っ子は大きくなり、ヒゲもはえてきました。ある日、末っ子は父親にいいました。 「お父さん、ぼくも王様のむすめを嫁にしたいので、王様のところへ行きます」 兄二人が帰って来なかったので、父親は末っ子を行かせたくありませんでした。末っ子は、親のいうことをよく聞くいい子でしたが、これだけは譲りませんでした。 末っ子が道を歩いて行くと、道端にからだ中できものだらけの老人が座っていました。老人は末っ子を見るといいました。 「お若いの、ちょっと頼みを聞いてくれないかい。私を川まで連れて行って、このできものの傷を洗っておくれ」 末っ子は老人の頼みを聞いて、川まで老人を連れて行き、ていねいにからだを洗ってあげました。老人はたいそう喜びました。末っ子はまた道へもどり、歩き始めました。すると老人が末っ子を呼び止めていいました。 「おまえはいい子だ。これから森の中で会うものたちにも親切にしておやり」 末っ子が森の中を歩いて行くと、小さなネズミが罠にしっぽを挟まれていました。 「お願いです。助けてください」 とネズミは頼みました。末っ子はネズミを罠からはずしてやりました。ネズミは喜んで森の中へ帰って行きました。また道を歩いて行くと、お腹が空いてきました。末っ子は座って、持って来たとうもろこしを食べようとしました。すると一羽の鳥が舞い降りて来ていいました。 「そのとうもろこしを分けていただけませんか。木の上の巣で子どもたちがお腹をすかせています」 末っ子は、とうもろこしを鳥にやりました。鳥は喜んで何度も巣の子どもたちに運びました。末っ子がまた道を歩いて行くと、大きな穴がありました。穴を覗くと中にヒョウが落ちていました。 「お願いです。わたしをここから出してください」 とヒョウがいいました。 「助けてやってもいいが、助けたら私を食うなんてことはないだろうね」 と末っ子は聞きました。 「そんなことは絶対にしません。どうかお願いします」 末っ子は穴の中に長い木を入れて、ヒョウが出てこられるようにしてやりました。ヒョウは喜んで、森の奥へ帰って行きました。 また道を行くと喉がかわいたので、末っ子は座って、持ってきたバナナジュースを飲もうとしました。すると、一匹のハチが耳元でいいました。 「わたしの大好きなジュース。ちょっと飲ませてくれませんか」 末っ子はハチにジュースを飲ませてやりました。ハチは喜んで飛んで行きました。 末っ子はまた道を歩いて、やっと王様のところへ着きました。末っ子もまた王様にむすめを嫁にほしいといいました。王様は四つの問題を出しました。 王様は草でできた家に末っ子を入れ外から扉に鍵をかけました。家には窓もなくて、中には山盛りの食べ物がありました。王様はいいました。 「いいか。その食べ物を全部食べなければ、お前は牢屋行きだぞ」 末っ子が食べても、食べても少しも減りません。もうだめだと思ったとき、地面に小さな穴が開き、助けたネズミが顔を出しました。穴からはネズミがぞろぞろ出てきました。たくさんのネズミが部屋いっぱいの食べ物をくわえて、また穴の中へ消えて行きました。あっという間に食べ物は全部なくなりました。 扉を開けた王様はたいそう驚きましたが、すぐまた次の問題をだしました。こんどは大きな囲いの中に、豆と米が混ざって撒いてありました。決められた短い時間のうちに豆と米をより分けて袋にいれるというものでした。細かい豆と米をどうやってより分けるというのでしょう。末っ子が途方に暮れていると、とうもろこしをやった鳥が飛んできました。続いてたくさんの鳥が飛んできて、つぎつぎに豆と米をくわえて袋に入れて行きました。あっという間に豆の袋と米の袋ができあがりました。 王様は驚きましたが、もっと難しい問題を出しました。それは夜に森へ行き、森に住む妖怪の首を取ってくるというものでした。末っ子は手刀と槍を持たされ、夜の森へ入って行きました。森の中にいると恐ろしい声が聞こえてきました。妖怪です。末っ子が手刀を振りかざすとその手を妖怪がつかみました。もう一方の手で槍をかまえるとその手もつかみました。もうダメだやられる。その時、何かが妖怪に跳びかかりました。ヒョウです。 助けたヒョウが妖怪と戦っています。ヒョウが妖怪を押さえつけ、末っ子は妖怪の首を切り落としました。 末っ子が妖怪の首を持って帰ると王様はいいました。 「うーん。今までは私の見ていない場所だったからお前は魔法をつかっていたかもしれない。最期の問題は皆が見ているところでやってもらおう」 王様は近隣の人びとを呼び集めました。人びとが取り囲む広い広い場所には、大きなかめが5千個ほど逆さにして置いてありました。 「このかめの一つに私のむすめが入っている。そのかめを言い当てたら、むすめをお前の妻にしてやろう」 王様はそういいました。 見渡すかぎりかめが並んでいます。この中でどうやってむすめの入ったかめを探せばいいのでしょう。かめの並んだ中を歩く末っ子を大勢の人びとが見つめています。その時、耳元でズズズッと音がしました。末っ子が手で振り払おうとすると、それはハチでした。 「わたしですよ。あなたにジュースをもらったハチです。わたしはむすめの入ったかめを知っています。ほら向こうの左端のかめです。さあ探すふりをして近づいて行きなさい」 ハチが末っ子に答えを教えても、ハチは小さいのでまわりの人びとには見えませんでした。末っ子はあちこち探すふりをして、むすめの入ったかめに近づいて行きました。すると一つのかめの上にハチがとまっていました。 「これだ。このかめだ」 末っ子が指したかめを開けると、王のむすめが出てきました。 王様は末っ子とむすめの結婚を許し、国の半分を分け与えました。そして牢に入れられていた二人の兄も許されて出てきました。 訳、挿絵: ふしはら のじこ
|
||