コ ンゴ民主共和国キブ地方の昔話
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ソンゴソンゴ

語り手:ジョン・カヘークワ (昨年9月世界の霊長類絵本展の会場で ジョンさんが語ってくれたお話です) 
 

あ るところに1 人の農夫がいました。
農夫は畑でトウモロコシを育てていました。トウモロコシが実をつけはじめると、一匹の虫ソンゴソンゴが農夫に言いました。
「私は背骨のないちいさな虫です。追い払わないで、どうかこのトウモロコシの中にいさせてください。この中でしか生きられないのです」
「あそうかい。ではトウモロコシの中にいてもいいよ」
と農夫はいいました。けれどソンゴソンゴはトウモロコシの中にじっといるだけではありませんでした。
ソンゴソンゴはトウモロコシを食べはじめました。食べて食べて、毎日食べていると、トウモロコシは元気がなくなって来ました。
「おや、どうしたことだ。トウモロコシが弱っていて病気のようだ」
畑にやって来た農夫は元気のないトウモロコシをじっと見ていました。すると中からソンゴソンゴが顔をだしました。
「おいソンゴソンゴ。お前は中にいるのか」農夫が聞きました。
「はいいますとも」ソンゴソンゴは答えました。
「中で何をしているんだ」
「私が中で生きていくにはご飯もたべないといけません」
「そんなに食べたら、私のトウモロコシが病気になるじゃないか」
「いえいえ、ほんの少ししか食べていませんよ」
そう言ってソンゴソンゴはまたトウモロコシの中で食べ続けていました。
そうして、トウモロコシの収穫をする時が来ました。
「ソンゴソンゴ」
「はいはい」
「もう外へ出る準備ができたか?」
農夫が聞きますと
「いいえ。もう少し待ってください。トウモロコシはまだ硬いですよ」
農夫はもう少し待つことにしました。そうして7 日ぐらいたってからまた収穫に来ました。
「ソンゴソンゴ、もう出る準備はできたかね」
「いいえ、まだなんです。トウモロコシはもう収穫できるけれど、今日は刈らないでもうちょっと待ってくださいな」
ソンゴソンゴは頼みました。農夫は仕方ないので次の日に収穫することにしました。
次の日、農夫がやって来て「ソンゴソンゴ。今から刈り取るので出てくれ」
といいました。するとソンゴソンゴは
「どうぞ。刈り取ってください。私も一緒に連れて帰ってくださいな」
といいました。
「そうかい」
と農夫は、ソンゴソンゴが中に入ったまま、トウモロコシを刈り取って家へ帰りました。
家に着くと、農夫はいいました。
「ソンゴソンゴ。さあ出て来い」
するとソンゴソンゴは
「まだですよ。料理をする時になったらここからでます」
といいました。そこで農夫は鍋に水をはり、トウモロコシを入れ、火にかけていいました。
「ソンゴソンゴ出てこい。鍋を火にかけたぞ」
するとソンゴソンゴは
「いやいや、まだ水が湯になっていませんよ。煮立ってきたら私は
外にでますよ」
といいました。
火にかけた鍋はぐらぐらと煮立ってきました。農夫はもう一度ソンゴソンゴに声をかけました。
「ソンゴソンゴ。出てこないのかい」
しかし返事はありません。農夫はソンゴソンゴが入っているトウモロコシを鍋から取ると、半分に切ってみました。するとソンゴソンゴはトウモロコシの中で死 んでいました。

訳・絵 ふしはらのじこ